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2011年10月の記事

2011年10月25日 (火)

常しえの耀きの中で - 後編-

  ー蕾を誰にも渡したくない…!ー

 そのたったひとつの想いが東雲を駆り立てた。


 翌日、美しく飾られた輿が多くの随行者を引き連れ、光明界へと発った。

「お待ち下さいませ東皇使さま!只今祭事の最中でございますれば、何とぞ、何とぞ今しばらくお待ち下さいませ!!」
 すでに式が執り行われているであろう扉の前で、門番や衛兵の制止を振り切り、殿内に乗り込もうと、招かれざる客の東雲は、暴挙に出ていた。

 一体どうすれば良いのか。考えついた答えはひとつだった。蕾と天の中洲の王子との婚儀を阻止し、蕾を連れ去る事だった。
 それがどういう事なのか、そんなことをすれば、どんなお咎めがあるのか、東雲には大した問題ではなかった。
 ただただ、蕾をこの腕に取り戻したかった。
 元々、武芸などたしなむ必要のない緑仙であったので、暴挙とは言えど、それは扉にすがり付く程度のものであった。しかし、永帝の皇子に乱暴な事をすることも出来ず、衛兵達は東雲を失礼のない程度に必死に押し留めていた。
「はなしておくれ。私は…私は蕾を…!!」
「ですから東皇使さま、お席をご準備致します故、何とぞ今しばらくお待ち下さいませ!!」
 係りの者が尋常でない東皇使に焦りながらも必死で引き止めた。
『…席?』
 東雲はその言葉に我にかえり、少し大人しくなった。
『しかし、私に二人の式に臨席しろと…?』
 程なくして別の係りの者が現れ、東雲を扉の中へと丁重に導いた。

 扉の中に一歩足を踏み入れたとたん、東雲は目を細めた。それは中庭へと通じる扉だった。
 辺りは光明界だけあって目も眩むほどの目映さで、まるで天の川を敷き詰めたかの様な耀く玉砂利の庭の中央に小さな舞台が設えてあり、そのすぐ側で数名の楽士が笙や篳篥、琵琶などを奏で始めていた。少し遠巻きに席が設けられており、そこには十数名の光仙たちがいた。
 眩しさに慣れた頃、東雲は舞台の正面、上座へと案内された。すでにそこに座していた光仙を確認し、東雲はギョッとした。その光仙は東雲をチラと見ると優しく微笑み、隣に座るよう促した。やわらかな光に包まれ、威厳と気品溢れるその人はまさしく源泉天女その人であった。そして源泉天女のもう片方の隣の席には、肩を落とし、首を項垂れ今にも泣き出しそうな天の中洲の王子の姿があった。
「これは一体…」
 東雲にはまだ事態が飲み込めていなかった。

 舞台の反対側に見える扉がゆっくりと開き、そこから舞台へと続く長くはない小川の様に煌めく道を一人の舞姫がしずしずと歩を進めてきた。
「!?蕾…!?」
 煌めく星花を金糸銀糸で縫いとった衣装を身に付けた蕾が、舞台の中央に辿り着くと、正面に座っていた東雲に気付き、しかし直ぐに目をそらせ、源泉天女に会釈した。

 辺りからは一斉に何とも言えぬ溜め息が漏れた。
 舞が始まったのだ。

 光明界においての蕾の美しさはまた格別のものだった。その血故か、淡い光に包まれたその肌は水底で静かに耀く真珠のようで、小さなくちびるを彩る薄紅がなお一層それを引き立てていた。立ち上る花気は清々しさを増し、それでいてキンと張りつめ、ゆっくりと優しく辺りに降り注ぐようだった。
 女神祭の舞とはまた違い、サラサラと久遠に流れる水や、儚くもハラハラと光る星の瞬きを表したかの様な皇女舞に、東雲はもちろん、列席している誰もが心を奪われていた。その中でも、一段と耀かしくも愛おしさのこもった笑みを浮かべ、蕾を見つめていたのは源泉天女その人であった。


 舞姫の袖がゆうるりと弧を描き、白い指先が何かを求めるように蒼空を指す。それはまるで、一輪の白い花が星の河をゆっくりとたゆたっていくようであった。
 そう、……愛しい者の元へと…。


 舞は静かに、厳かなうちに終えた。

 その後、東雲は事の次第を源泉天女から聞かされるのだった。
 どうしても花の皇女の事が忘れられなかった天の中洲の王子が、源泉天女に泣きつき、縁談話を持ち上げてもらった。源泉天女の薦めではさすがの蕾も断れないと思ったのだろう。しかし、母帝から申し渡された直後、蕾は光明界へ飛び、自分には思いを通わせた者がいること、その者以外は天地が逆になっても考えられないこと、たとえ敬愛する祖母の願いでも、霊元天神さまの御神託であっても心は変えられない。魂をかけて愛している者があると言うことを訴えていた。その蕾の真剣な想いに触れた源泉天女は、ならばかわりにせめてもの慰みにと、天の中洲の王子のために皇女舞を望まれ、蕾はそれを快諾した、と言うことだった。

「そう言う事だったのか…」
 蕾の宮は最奥殿で、東雲は安堵の溜め息を一つついた。
「どう言う事だと思ったのだ?」
 いつになく、いや、いつもそうではあるのだが、久々にあんな風に慌てた東雲を見た蕾は、面白そうにクスクスと笑いながら訊ねた。
「え…いや…それは…」
 少しバツが悪そうに東雲は指先でポリポリと頭を掻いた。
「わたしがお前を捨てて、あのヌケサクの元に嫁ぐとでも思っていたのか?」
「だって、薫どのが私にも会わせられないなんて言うものだから…」
「それは女神祭の時と同じではないか」
「はい…そうでした…;」 普段は冷静沈着な東雲であったが、あの時ばかりはパニック状態に陥り、考えがそこまで及ばなかったのだった。
「バカだなお前。まあいい。勘違いしたとは言え、お前があの場に乗り込んできた事に免じて許してやろう」
 蕾は悪戯っぽく笑ってみせた。
 蕾の心をほんの少しでも疑ったかもしれない男ではあったが、それは立場が変われば蕾とて同じこと。だが、考えるより先に行動に移した東雲に、蕾は満足していた。
 たまにはこうゆうのも悪くはない…と。

 それぞれに想いを馳せ、いつしかお互いがみつめあった。
「かれこれ一週間ぶりだな」
 蕾は少し上目遣いで呟いた。
「え!…あ、そ、そうだね」
 一週間、いや、もっともっと長い間会っていなかったような錯覚に襲われそうになった。
「今宵は眠っている時間などないぞ」
 蕾がニヤリと笑った。
「蕾…それは私のセリフだよ」
 少し困ったように、しかし嬉しさをほころばせながら、東雲は愛しい人をみつめた。


 星の煌めきが一つ、また一つと夜空を彩り始めた頃、二つの影はゆっくりと一つに溶け合っていったのであった。

おわり

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2011年10月22日 (土)

常しえの耀きの中で - 前編-

「東皇使さま、東皇使さま、御存知ですか?」
 側仕えの一人が、教授たちの提出物を徹夜で採点している東雲にお茶を差し出しながら、少し申し訳なさそうに話しかけた。
「ん?なに…」
 仕事の邪魔になるかもと思いながらも、お耳に入れなければと思った彼が、遠慮がちに囁いた言葉に、採点に集中していた東雲は幾分上の空で答えた。
「何でも近々、華恭苑の花の皇女さまがご婚姻なされるそうですよ」
 あくまでも噂話の域であったので、即否定されるものと思っていた。
「ふーん、結婚?蕾が?へぇ〜」
 しかし、筆をサラサラと走らせながら、東雲は答えた。
「はい」
 彼は怪訝に思いながらも、様子をうかがうように、少し顔を覗き込む様に答えた。
「……えっ!?今、何て!?」
 東雲は書類とにらめっこしていた顔をおもむろに上げた。


  蕾が…けっこんーーーーーっ!?!?!?!?!?!?


 寝耳に水だった。一体どうゆう事なのか、東雲には全く理解できなかった。
『私という者がありながら、蕾が結婚!?あり得ない!そんなこと絶対に!!』

  ーではなぜ?ー

『この五日間、職務に追われて、一度もきみに会いに行かなかった私への新手の嫌がらせなのかい?いや、そんなこと…。ああ、一体どうゆう事なんだ!きみの口からはっきり聞かないと信じられないよ!』

  ー蕾…ああ、蕾…!!ー


 その日、夜が明けるのも待ちきれず、朝陽が昇りはじめたとたん、東雲は庵を飛び出し蕾の元へと飛び立った。

 まだ目覚めきっていない華恭苑は錦泉殿の東にある、勝手知ったる蕾の宮の最奥殿を東雲は一目散に目指した。

「まあ、これは東皇使さま。こんな朝早くにどうされたのですか?」
 蕾の寝所から出てきた薫と鉢合わせ、一瞬我を取り戻した東雲だったが、息を整えると、当然の様に薫に言うのだった。
「蕾に会いに来ました」
 自分は蕾の許嫁。誰もが公認の仲だった。そんな許嫁がこんな時間にこの場所に居たとしても、なんの不思議もあるはずはなかった。
 しかし、この日の薫の表情は違っていた。
『こんな早朝から?』
 と言った感じに、一瞬キョトンとした薫だったが、優しい笑みを浮かべると、少し困った様に答えるのだった。
「申し訳ごさいません。蕾さまは大切な儀式のため、三日前から潔斎に入っておられ、今は御祓の最中でございます」
「大切な儀式…?それはもしや…」
 側仕えの言っていた事が頭を過った。
「で、では、それが終わったら取り次いでいただけますね?」

  ーわたしは蕾の許嫁なのだから…ー

 ほんの少し様子のおかしい、いつになく必死にすがりつこうとする東雲に驚き、それでも薫は断りの言葉を口にするしかなかった。
「東皇使さま…大変申し上げにくいのですが…今、蕾さまを他の殿方にお会わせすることは出来かねるのです…」
「!?」
 それはもしや…婚姻の準備が進んでいると言うことなのか…!?
「あ、では…蕾さまの仕度がございますので…」
 薫は軽く会釈すると、呆然と立ち尽くす東雲の傍らをそそくさと立ち去って行った。

『まさか、本当にきみは私以外の誰かと結婚するっていうのかい!?一体相手は誰なんだ!なぜこんな急に…』

 すっかり青ざめ、どうして良いのか考えも纏まらず立ち尽くす東雲だったが、少し離れた柱の陰から無礼にも小声で呼びながら手招きする者に気付いた。
「!?曙橙将軍?」

「曙橙将軍、蕾に何があったのです…蕾の…蕾の相手は一体誰なんです!!」
 もしここに第三者がいて、東雲の表情だけを見たならば、曙橙将軍が温厚な東皇使にこっぴどく叱られている様に見えたに違いなかった。

「その事でございますが、実は…上将のお相手は、天の中洲の王子なのでございます」
 滝のような涙を流しながら、橙士は訴えた。
「えっ!?天の中洲の王子ですって!?あの光明界の!?」
「さようでございます。そして…そして上将は明日、光明界にお発ちになられます!」
「何だって!?あり得ない、そんな!だって蕾はあの王子の事など…それにこんな急に!」
「それが…此度の件、源泉天女さまのお取り成しにございます」
「源泉天女さまの…!?」
 源泉天女、即ち花の帝、錦花仙帝の実母にして蕾の祖母にあたられる方…。
 どうやら蕾に一目惚れし、一度求婚に失敗しているにもかかわらず、天の中洲の王子はどうしても蕾の事が諦めきれず、源泉天女の元を連日訪れ、蕾との縁談を取り持ってくれるよう嘆願していたようだった。それに根負けした源泉天女が、錦花仙帝の元へ婚姻の話を持ち込んだ次第だった。

 蕾とて光明界の血を引いている。故に祖母からの縁談話を無下に断るわけにもいかなかったに違いなかった。そして、身分から言っても天の中洲の王子となら釣り合わないこともない。また華恭苑から貴くも美しい一輪の花が輿入れする事を光明界の者たちも望まないはずはなかった。

「きみは源泉天女さまからの話を断りきれず、私に何も言わず行ってしまうのかい?そんな…蕾…蕾!!」
 一旦自分の庵に戻り、考えをまとめようとした。だがあまりの出来事にどうしたら良いのかわからず、ただ頭を抱えるだけであった。

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リクその1

大変お待たせいたしました^^;
こんだけ時間かけてこの程度かいっ!ってつっこまないで下さいね。私ってばやらなきゃならないことを目の前にしたら、ついつい他の事をしたくなっちゃうんですよ。悪い癖です。だからこんなに遅くなっちゃいました。すいませんf(^_^;
パソコンを前にしてたらもうちょっと早く書けるんですけどね。マジでなんとかしたいです。いや、その前に仕事を探せってか!?

蘭さんからのリクエスト、「突然現れた蕾ちゃまへの求婚者に焦る東雲さん」です。あまり嫉妬感は出ませんでしたf(^_^;
「嫉妬に狂う東雲」は「シークレット3」で書く予定ではあります。

まずは前編。
お気に召していただけると良いのですが…(;^_^A

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2011年10月12日 (水)

おっ肉ぅ〜♪

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2011年10月 1日 (土)

光と影

今、「ベルばら」読み返してます。読みながら、ちょっとした事がしのつぼと重なり、ニンマリしたりなんかしてます(*^^*)
例えば、オスカルさまの女ながらに軍人…てのはまさしく皇女蕾と重なります!おまけに気高くも美しく、凛々しいお姿も皇女蕾と同じです!
オスカルさま=皇女蕾だとしたら、アンドレ=東雲か!?
♪君はぁ〜光ぃ〜僕は影ぇ〜♪って歌っている東雲を想像すると、なんか笑える(^^)
でも、設定的にはちと違うところも。オスカルさまは貴族でアンドレは平民。かたや蕾は皇女で東雲は皇子。釣り合いはとれているけれど、どちらかと言えば東雲の方が身分は上。
アンドレは身分違いの愛に苦悩しているけど、東雲はそんな事で悩む必要はなし(別の意味で悩みの種多し、だけど)。
だけど、いつも陰ながら愛しい人を見守っているアンドレと東雲は、やっぱり重なってしまいます(同じ黒髪だしー・笑)。ウフフ♪
そして二人は最後には結ばれる!ああ、なんてステキなんでしょう!(*^^*)
実は、私のSSのどこかに、オスカルさまからパクったセリフがあるんですよ〜。どこでしょうね〜(*^^*)


「わたしの東雲ーっ!!」ってか?

「花筵亭異聞」さんはコチラ

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「春花舞」さんはコチラ


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