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2014年12月24日 (水)

ああ、クリスマス

「透どの〜今年は本当に頼むでござるよ〜」
 いつぞやのクリスマスで透の助言を受け、蕾にアタックした橙士であったが、透にいっぱいくわされ、撃沈したものの、やはり諦めきれず、今年のクリスマスこそはと意気込みつつも、下界の習わしがわからない橙士にとっては、やはり頼れるのは透しかいなかった。
「大丈夫、大丈夫。今年はうまくいくから」
 何やら含み笑いをしながら、透が今年の下界の傾向をもとに練った作戦を橙士に授けるのだった。
「本当にそんな事で上将が某にメロメロ(死語)になるんでござるか!?」
「ああ、間違いないって。今年の女子はこれでイチコロ(死語)だぜ!」
 透は自信ありげに事細かく橙士に説明し、橙士もまたやる気満々で瞳を輝かせながら透の説明に聞き入っていた。
「それから、最後のセリフも忘れないようにね!」
 透が念押しする。
「本当にそれで上将のお心をゲット出来るのでござるね!?」
 橙士も念押しする。
「ああ、三田やんたちと忘年会やる予定で、その時の余興の練習毎日やってるから、蕾のやつ絶対に反応するはずだから」
「本当に!?」
「ああ、ありのままの橙さんで、ちゃんと俺が教えた通りにやれば、バッチリだから!」
 そんな透の言葉に橙士の心は燃え、礼を言うと一目散に蕾の元へと飛んでいった。
『橙さんなら、普通の女子だったら簡単におとせるだろうけど、相手は蕾…。まあ無理だろうけど、頑張ってちょ♪』
 キシシ…と意味深な、いや、ズルそうな笑みを浮かべながら透は夕姫へのクリスマスプレゼントを探しに、街の雑踏の中へと消えていった。


  :::*:::*:::*:::*

「なんだ橙士、こんな所に呼び出して」
 橙士は蕾をビルとビルの間の狭い路地に誘い出していた。そして突然、ビルの壁を背にする蕾に覆い被さるかのように、蕾の頭上の壁にドンと手をついた。
「?」
 いつになくシリアスな橙士の顔を見上げながら、蕾は何事かと思った。
 決まった!とばかりにドヤ顔の橙士が、呪文のように透から教わった台詞を口にした。
「いいじゃないのぉ〜」
「ダメよ〜、ダメダメ〜」 橙士の台詞に、蕾は反射的に応えてしまった。そう、忘年会の余興の練習の成果であった。しかし、
「何を言わすかーっ!!」
 思わず反応してしまい、顔を真っ赤にしながら怒った蕾のアッパーが炸裂した。橙士はビルの壁と平行に凄まじい勢いで舞い上がり、そのまま天界までぶっ飛んでしまった。
 橙士のクリスマスは終わった。


「蕾!こんな所にいたのかい」
「東雲…」
 何やら慌てながら東雲があらわれた。
「ホテルのレストランを予約してあるんだ。そろそろ行かないっ…と、と、と…!」
 路地に転がっていた小さなガラクタに躓き、コケそうになった東雲はバランスを崩しながらもその勢いで蕾の前まで来ると、蕾の背後の壁にドンと手をついた。
「…」
「どうしたの?蕾」
 ほんの暫く、無言で東雲を見上げた蕾は、東雲の下からスルリと抜け出すと、スタスタと通りの方へと歩き出した。
「蕾?」
「レストランを予約してあるのだろう?さっさと行くぞ!」
 東雲の顔も見ずに素っ気なく背中でそう言うと、さらにスタスタと歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってよ蕾!」
 慌てて東雲が蕾の後を追った。
 そんな蕾の頬が、ほんの少し赤らんでいたのを、東雲は知るよしもなかった。

 いつの間にか、ヒラヒラと雪が舞いはじめていた。
 東雲は蕾に追いつくと、さりげなく蕾の腕に自分の腕を絡めた。

 ふたりのクリスマスの夜は、これからだ…。


おわり

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