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G-Wミステリー・蓮川一也殺人事件

G-Wミステリー・蓮川一也殺人事件

 蓮川一也が死んだ。11月末のことであった。その知らせはあっと言う間に寮内を駆け巡り、直ちに戒厳令が敷かれた。
 214号室の前は、好奇心に凝り固まった寮生たちで黒山の人だかりができていた。蓮川一也はもがき苦しんだらしく半分こたつに足を突っ込み、仰向けになり、胸元をかきむしるようにして死んでいた。こたつの上には冷えた三本(内、一本は食べかけ)の焼き芋と、みかんが数個転がっていた。
 今回の事件が主役争いからきたものではないか、という寮生達の証言から、三人の容疑者の名が上げられた。被害者の先輩にあたる隣室の池田光流、手塚忍、そして被害者と同室の如月瞬であった。しかし三人とも犯行を否認した。

 証言その1.池田 光流
「俺が蓮川を?笑っちゃうぜ。何で俺があいつを殺さなきゃなんないんだよ。主役の座くらいでいちいち人なんか殺してられっかよ。あほらしい。え?でも俺は目立ちたがり屋だから主役の座はほしかったんじゃないかって?ばーか、一応あいつが主役ってことになってるけどぉ、G-Wではみんなが、一人一人が主役なんだよ!も一回1巻から読み直せば?」
 と光流はどこに持っていたのか、「ここはグリーンウッド」第1巻をさりげなくちらつかせた。

 証言その2.手塚 忍
「容疑者?ばかばかしい。蓮川が主人公だということさえ忘れていたのに、わざわざ殺す必要がどこにあるんです?え?蓮川苛め?ああ、あれは暗黙の了解…とでもいっておきましょう。日常茶飯事、G-Wの常識ですよ」
 忍は蛇のような冷ややかな目で笑って見せた。死人に口なし…とはよく言ったものだ。

 証言その3.如月 瞬
「えー、ぼく知らないよー。本当に。お風呂から帰って来たらスカちゃんが死んでたんだよ。ぼくじゃないよー」
 とプリプリ怒る瞬。
「あ、そういえば…」
 何か思い出したらしく、ポンと手を叩いた。
「ぼくがお風呂に行く前に、スカちゃんに面会人が来たんだ」
 新たな展開であった。

 証言その4.寮のおばさん
「ええ、女の子でしたわ。髪の短い。そうそう、たしか池田君の後輩で元不良の、憎ったらしい、生意気な、ああやだ、あの時のこと思い出しちゃったじゃないの、え?ああ、ごめんなさい何だったかしら?ああ、そうそう、たしか蓮川君の彼女じゃなかったかしら。すぐに帰っちゃったから別に気にもしなかったんですけどね」 
 容疑者が増えた。被害者の彼女、五十嵐巳夜である。

 証言その5.五十嵐 巳夜
「ちがうったらちがう!何でおれがあいつを殺さなきゃなんないんだよー!何でー!」
 瞳に半分涙をためて、五十嵐は暴れた。
「あのぉ…」
 とおずおずと現れたのは、被害者の良き後輩、G-Wの留学生フレッド・セレネであった。
「ボク、聞きました。ハスカワせんぱいの部屋で、せんぱいがだれかといいあらそってる声を」 

 証言その6.フレッド・セレネ
「しんばいでろうかのはしでうかがってたら、イケダせんぱい出て来ました」
 やはり犯人は池田光流か!?
「んなわけねーだろ!」
 光流が青筋を立てて怒鳴った。違うのならちゃんと説明できるはずだ…。集まった面々は疑いの眼を今、一斉に光流の方へと注いだ。
「だから、実はこーなんだよ」
 光流は渋々話し出した。

 証言その7.再び池田 光流
「五十嵐が…五十嵐がこいつにさし入れ持って来たんだ」
 光流は開き直り、死体のすぐ横にどっかと腰を下ろした。
「で、そのさし入れ、焼き芋なんだけど…俺にも一本よこせって言ったら、こいつ、きっぱりと断りやがった」
 光流は死体の頭をゴンと一発殴りつけた。
「それでカッとなって殺した…」
 瞬が囁いた。同時にゲンコツが飛ぶ。
「五十嵐の愛情(焼き芋)は俺のもんだって、誰にもやらないって、いきなりほお張るんだよなこいつ…思えばケチくさいよなぁ。愛情に飢えてんのはわかるけどさぁ、たかが焼き芋だもんなァ」
「たかが焼き芋、されど焼き芋」
 忍が呟いた。
「でも俺じゃないぜ」
 光流はきっぱりと無実を言い切った。
 ではやはり五十嵐が…。泣きわめき、暴れている所を見ると、やはり違うようであった。
「犯人がいないとなると…」
 忍が腕を組む。
「あ、なーんだ、そうか」
 突然瞬がポンと手を叩く。
「あはっ、こいつ、バカじゃねーの」
 光流が急に吹き出した。

 三人がこたつの上に転がるものを指さし、ゲラゲラと笑い出した。蓮川の死因がわかったのである。物見遊山に集まった寮生たちも、彼らの指さすものを見て、その結論に気づき、「なーんだ」としょうもなさそうにぞろぞろとその場を立ち去り、それぞれの部屋へと戻りはじめた。退屈の虫がうずきはじめた彼ら、どんな(殺人)事件が起こったのかと期待していたにもかかわらず、それは見事に裏切られてしまったのである。
 彼らが指し示したもの、それはみかんとともに転がる…。

 蓮川少年亡き後も、GーWの平和と退屈は続くのであった。 

END