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蕾&東雲+萌葱 小話 その3

蕾&東雲+萌葱 小話 その3

「オレの子を産んでほしい・・・」

 突然の、それも突拍子もない告白に、萌葱の思考は真っ白になり、ただ口を魚のようにパクつかせた。
「オレの生命はいくらも長くないらしい・・・。その前に次代を残さなければならない」
 蕾は今までにないくらい真剣だった。

 怪魔との戦いで負った傷を治療してもらった折り、深刻な面もちの東雲にそう告げられた。信じられなかったが、薫や錦花仙帝にもまだ伏せられていることから、それが真実だと悟った。その時瞬時に心に思ったことは、「子を生す」ということだった。しかしいざ、子を残さなければならないとなると、どうしてよいかすぐには思いつかなかった。何故なら、自分には親しい媛など一人も居なかったからだ。だからといって適当にあてがわれた媛との間に子を生すのもどうかと思った。そして考えあぐねた結果、唯一思いついた媛が万儀法師萌葱であった。幸いにも萌葱は少なからず自分に好意を持ってくれているという。
 蕾は意を決して萌葱に事の次第を打ち明けた。

「こんなことを話せる媛は、万儀法師どのしか思いつかなかった・・・。万儀法師どのであればもしかしたらこのオレを・・・」
 蕾は萌葱の足下に膝を折った。
「か、花将さま・・・!?」
 具合でも悪くなったのだろうかと、蕾の両肩に手を差しかけ、一瞬我に返ると辺りをキョロキョロと見回した。
『花将さまのお命があと僅かだなんて・・・!?そんな、そんなことが・・・!』
 天界一の武将が少し弱々しく見えた。萌葱はそっと手を引くと、たまらず掛け出しその場を去った。
「万儀法師どの!?」
 突然の行動に、蕾は唖然とした。


「しーのーのーめーっ!!」
 肩を怒らせ、息も荒く、拳を鳴らし今にも殴りかからんばかりの勢いの蕾が鬼気迫る面立ちで現れた。
「ちょ、ちょっと、蕾。待って・・・待ちなさい!!」
 蕾の形相を見て、「やばい」と思った東雲が慌て、腰掛けていた椅子からずり落ちた。
「問答無用!!」
 蕾は東雲に躍りかかった。
「花将!!」
 寸前、後を追いかけてきた上条宗司五百重の声で蕾の拳は止まった。


「今回のこと、これもそなたを心配してのこと。決して悪気があったわけではないゆえ、どうかゆるしてやってほしい」

 蕾の結婚・子作り問題に東雲が一役買った結果であった。

 命の危機ともなればそれらの問題にそれなりに真剣に向き合うのではないか、と錦花仙帝に東雲が提案し、自らそれを実行した。東雲の演技ぶりにまんまと騙され、その気になった蕾だったが、混乱した萌葱が五百重を呼び、蕾を診て貰った結果、異常なしという結果になった。東雲の策略にまんまとハマってしまったことを知った蕾が怒り心頭のまま、東雲の庵に乗り込んだのだった。


「萌葱、きみは蕾のことを好きなのではなかったのかい?」
「ええ、もちろん好きですわ。ですが、花将さまのお命があと僅かとお聞きし、居ても立っても居られなくなったのですわ」
「きみのことだから舞い上がってそのまま・・・と期待していたけど、計算外だったわけだ・・・」
 日頃から萌葱の恋愛感情に未熟さと疑問を抱きながらも、どうにか蕾と添わせようと目論む東雲だったが、今回のことでそれすらも危うくなったような気がした。
「だけど、これで花将さまもこの私に興味があるということがわかってよかったですわ。あとは押し、あるのみですわね!」
 萌葱は瞳を爛々と輝かせた。
「勘違いでなければいいけどね」
「え?何か言いました?」
「いや、何も・・・」


 蕾の結婚問題に終わりはない・・・。

終わろう。